【20代バイヤー向け】超リアル購買体験談

某機械メーカーバイヤー9年目、駆け出しだった頃の超リアルな体験談を記載中。20代バイヤーの方がこんな奴いるなら、もう少し頑張ろうかなと思ってもらえるような殴り書き

「二度と電話してくんな!!!」

サプライヤーとの電話のやり取りです。

 

バイヤーであるわたしは、サプライヤさんに製品を納入いただき、対価としてお金を

支払う立場になります。

こだわりのラーメン屋さんが、気に入らないお客様に毒吐くシーン。

「二度と来るんじゃねえ!」

こだわりはわかるけど、客に向かってそんな言い方・・・って思いますね。

あれです。

 

通常あり得ないこの罵倒は、今最も信頼のおけるサプライヤさんの1社である社長に

言われた一言です。

 

21歳の時、バイヤーとして駆け出しの状態で、仕事の進め方もままならない頃でした。

発注の権限など当然無く、一つ一つの製品に対して上司の判断を仰ぎ、サプライヤさんに発注させていただく日々でした。

 

サプライヤさんから見積をいただき、懇々と上司に指導される日々でしたが、

製作するためには、少々特殊な設備が必要となる製品を発注することとなりました。

しかもお客様の要求もあって、通常3週間は掛かると言われる製品を、

約1週間で完成させる、非常に短納期でもありました。

 

当時そのサプライヤさんの特色は、関西に位置し土地柄もあってか、

多数の企業の間を繋いで、複数の工程を跨いで製品を作り上げる。

そんなスタイルでした。

その高難度の製品発注に私は、そのスタイルが合致する考えのもと、

製作を依頼しました。

 

社長の第一回答は、

・新しく治具を作らなければならないこと。

・設備も限定され、コスト的にも相当な金額になる可能性が高い。

お断りに等しい連絡でした。

 

ですが、納期は迫る一方、これから他社に当たる猶予も残されておらず、

何とか製作を進めて欲しいと繰り返し、しぶしぶ社長も了解してくれました。

 

 

そこからは毎日、数時間に1度は電話で状況を聞き取りしながら、納期に向けて、

社長にお願いするという動きを繰り返し行いました。

結果的に、そのサプライヤさんは、多数の企業間をほとんどハンドキャリーで

回しながら、納期に向けて対応いただいてました。

 

その多大な努力をいただいたおかげで、当初無理だろうと意見もあった中、

何とか納期に間に合う目途が立てることが出来たのでした。

 

しかし、、、

 

ハンドキャリーや、複数の企業が目の前の仕事を止めて、

イレギュラーな動きをしていただいたこともあり、お見積りをいただいた時には、

想定を遥かに超える金額となっていました。

 

毎日電話していたこともあって、その社長の動きを知っていた私は、

なんとかその見積金額を上司に承認してもらうべく、どんな理由があって、

ここに至ったか、説明を繰り返すのですが、

 

 

「こんな金額は論外。お願いしてコスト協力してもらえ」

 

 

淡々とした口調で、私にそう告げました。

 

わたしの拙い説明力で、その上司を説得出来る訳も無く。

翌日を納期に控えたその日、社長から電話がありました。

 

「ギリギリなったけど、なんとか出来たで!これであんたの顔を少しは立つやろ!

よかったな~ははは!」

  

「ありがとうございます!でも、ほんとにごめん!実はどうしても予算の兼ね合いがあって、コスト相談だけさせて!」

 

付き合いの浅いわたしに、そんな軽口きけるわけもなく、

無理矢理に納期のお願いをしたあげく、今後は、コストの相談を始めるのでした。

 

「高くなるって最初に言うたやん!

あんだけ人のこと、振り回しといて何を言うてんねん!

あんたのおかげで、うちの社内めちゃくちゃなっとんやで!

そんなこと言うんならもうええわ!いくらでもええ!10円でもつけとけや!

ただな!納品止めたるからな!

二度と電話してくんな!!!

ガヂャッ!!」

 

切られた電話を片手に茫然としました。

 

ただ、

サプライヤさんを何故こんなにも怒らせたのか。

納期を守るには、今日必ず出荷してもらわなければいけない。

上司に何て言えば・・・・

 

でも、、、もう電話する勇気も、上司に報告する気力も、これっぽっちも残ってない。

 

茫然としたまま数分後、

サプライヤさんの番号で、コールされました。

 

番頭さんからでした。

 

「今日ちゃんと出荷するから。安心してね。頑張り。ほなまたね。」

 

とても短い電話でした。

ただ電話を置いた瞬間、涙が溢れてきました。

 

 

製作を進めていただくということは、注文書を発行するということ。

注文書を発行する段階では、当然予算があって、金額を互いに取り決めるということ。

 そして、どんな製品であろうと、自分の注文によって大勢の方が関わり、

汗をかいて完成させるために労力を割いているということ。

 

こんな当たり前のことを放り投げてわたしは、差し迫る納期のことだけを考えていました。

 

この一件からわたしの中で、「親会社としてサプライヤに注文してやっている。」

なんて勘違いは消え去りました。

ただそれと引き換えに、サプライヤさんに強く言えないバイヤーとしての

苦労も多く味わうのでした。